研究グループ一覧

(1) 消化管研究

当グループでは、手術に関する臨床的な研究や、がん薬物療法に関する基礎的な研究を行っています。手術に関しては、将来の遠隔手術実現のためロボットを使った遠隔手術の実証実験を行っています。企業と協力し新しい遠隔指導用の専用機器も開発中です。手術や内視鏡画像に対する人工知能(AI)を用いた画期的な映像判定システムの研究も行っており、将来はAIによる癌の早期発見や手術の補助が可能となるかもしれません。基礎的な研究としては、薬物治療を最適な患者さんに届けるためにバイオマーカー研究を中心に行っています。効果予測のための特異的抗体を作成したり、血液中のがん由来の微量な遊離DNAを検出することで、がんをモニタリングしながら治療する画期的な方法を開発しています。この分野では世界トップレベルの研究が行われています。

(2) 肝臓・脾臓・門脈・肝臓移植研究

難治性である肝胆膵領域の悪性腫瘍に対する治療成績のさらなる向上、高度な技術を要する肝胆膵外科手術手技の安全性・根治性に対するエビデンスの確立、がんの本質を捉え、新たなバイオマーカーの探索や新しい治療法の開発を目標とし、臨床研究や臨床試験、そして基礎的な研究を含めた多角的な研究を行っております。
肝移植分野では、手術手技の改善による脳死肝移植及び生体肝移植の成績向上の研究、進行肝癌に対する適応拡大・再発予防の研究、脾臓摘出を中心とした過小グラフト症候群対策と予防に対する研究、血液型不適合移植や胆管合併症、denovo発癌などの合併症に対する研究、iPS細胞を用いた肝不全改善、免疫寛容のメカニズムの研究などがあげられます。これらの問題をひとつひとつ解決していくために継続的に臨床研究および基礎研究を行い、日夜努力しています。
脾・門脈分野では、脾腫・門脈血行異常症の原因究明を目指した基礎研究、および治療成績の向上を目指した臨床研究を行っております。希少疾患である門脈血行異常症に関しては、その診断と治療法の確立を目指し、定点モニタリングによる全国疫学調査、全国検体保存センターの運営に携わると共に、門脈血行異常症ガイドラインの改定に尽力しております。

(3) 乳腺研究

乳腺グループでは、主に乳がんを中心とした基礎研究および臨床研究を行っております。
基礎研究においては、乳がんの分子生物学的側面に着目して、遺伝子・細胞レベルの実験を主に行っております。臨床研究においては、これまで当科で治療を行った患者さんのデータベースを用いて、がんの特性を解明するための解析や、最適な治療方法を選択するための解析を行っております。
日々の診療の中で生じた疑問を解決するために、基礎と臨床の両面から研究し、乳がん患者さんにフィードバックできるよう日々努力しています。

(4) 呼吸器研究

呼吸器外科グループでは、原発性肺がんを中心とした胸部悪性腫瘍の基礎研究・臨床研究に精力的に取り組んでいます。基礎研究では、肺がんや悪性胸膜中皮腫の腫瘍免疫や分子生物学的側面に着目して、遺伝子・細胞レベルの実験から人工知能(AI)を用いたデータ解析まで幅広い手法を用いた研究を展開しています。臨床研究においては、これまで当科で治療を行った患者さんのデータベースを用いた解析を行うとともに、JCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)・WJOG(西日本がん研究機構)・LOGiK(九州肺癌研究機構)などの共同研究グループに所属し、様々な研究活動(多施設共同臨床試験)に参加しています。胸部悪性腫瘍の治療成績向上に向け、日々努力しています。

(5) 血管研究

我々、血管グループは動脈硬化のメカニズムの解明を主題とした研究を行ってきました。まず、バイパス後のグラフト流速波形と開存率に相関があることを発見致しました。そして、異常血流モデルを作成し、自家静脈グラフトの内膜肥厚を観察することで、内皮機能の低下、血小板凝集、平滑筋増殖の促進が、グラフトの晩期閉塞の原因となることを明らかにしました。次いで、細胞周期関連遺伝子BubR1が動脈硬化に及ぼす影響を研究してきました。BubR1の発現が約20%に低下したBubR1低発現マウスを作製し、同モデルで種々の研究を行うことで、細胞周期関連遺伝子BubR1が動脈硬化抑制のターゲットとなりうることを見いだしました。最近はこのモデルを用いて動脈瘤の形成抑制の研究を行っています。
動脈瘤は手術以外に治療法が無い疾患ですが、増大抑制効果を有する治療法の開発は臨床現場に大きなフィードバックをもたらすと考えております。