留学レポート

海外留学

REPORT 01

(入局年/平成25年)

アメリカ合衆国
ピッツバーグ大学病理部

2022年11月よりアメリカのピッツバーグ大学病理部で研究員として勤務しています。先輩方の跡を継ぎ、当研究室への研究留学は私で4人目となりました。学生時代から海外留学への憧れを漠然と抱いていましたが、留学経験者の先輩方から話を聞き、最先端の研究環境で学ぶことの魅力を強く感じて今回留学する機会をいただくこととなりました。
研究テーマは肝再生と肝不全に関するもので、パワフルでアイデア豊かなボスのもとで研究しています。彼の指導の下、科学的仮説を立て、それを証明する方法についての深い知見を得ることができ、私自身の研究マインドも格段に向上しているように思われます。
家族とともに渡米した当初は、文化の違いや言語の壁に苦労しましたが、家族で支え合いながら多くの困難を乗り越えてきました。また、アメリカという広大な国を家族で旅行することも楽しみの一つです。多様な文化や歴史を肌で感じることができ、これらの経験はすでに私の人生にとってかけがえのないものになっています。
後輩の皆さんにも、留学を通じて得られる学びや経験の価値をぜひ知ってもらいたいと思います。ピッツバーグ大学での留学生活は、研究者としてだけでなく、一人の人間としても成長できる貴重な時間となっています。

REPORT 02

(入局年/平成25年)

アメリカ合衆国
ハーバード大学ダナ・ファーバー癌研究所

2022年5月より米国のボストンにあるハーバード大学ダナ・ファーバー癌研究所で、ポスドクとして勤務しています。現在、肺癌の分子標的薬の耐性機序について研究を進めています。
日々、臨床や手術に携わる中で、癌の知識を根本から身につけ、世界中のオンコロジストとdiscussionができるようになりたいという思いが強くなり、海外基礎研究の世界に飛び込みました。渡米してすぐは英語がわからないのか、研究がわからないのかすらわからない苦しい状況でしたが、ただ必死に研究を進める中で約1年が過ぎ、気がつけばボスとの数時間のdiscussionを毎週繰り返しており、当初の目標は少しずつ達成されていることを実感しています。世界的な施設でP.I.を務めるボスの癌全体にわたる凄まじい知識や発想、そして意思を尊重してくれる指導法には感銘を受けるばかりです。
また、ボストン は世界的なラボが近くに多く、コラボレーションの垣根も低く、著名な研究者たちとのmeetingも非常に貴重な経験となっています。ボスを含め、世界には本当にとんでもなく頭の良い人がいるものだとしみじみ実感します。一方で妻も子供達もとてもこちらでの生活、学校を楽しんでおり、家族共々大変貴重な経験ができています。自分と似た境遇、志をもつ人たちとの出会いも多く、それだけでも留学の価値があると感じます。自分で行き先を選び海外での生活を経験できる職種も限られているかと思います。長い医師人生、ぜひ将来の海外留学も視野に入れてみてください。

REPORT 03

(入局年/平成24年)

アメリカ合衆国
バージニア州立大学

私は2019年よりアメリカのバージニア州にあるバージニア州立大学で、腹部多臓器移植のクリニカルフェローとして勤務しています。こちらではドナーやレシピエントの手術に加え、移植の適応評価、ICUを含めた患者管理なども行っています。
アメリカの臨床プログラムに参加する利点として、圧倒的な症例数から得られる経験は代え難いものがあり、さらに免疫抑制剤の使い方や移植臓器の機械還流など最先端の技術も学ぶことができます。
移植外科は欧米で始まった脳死移植を中心に発展しており、肝移植について言えば、欧米から始まった脳死肝移植から、アジアで生体肝移植が発展し、成熟期を迎えています。現在、欧米では生体肝移植の必要性が高まっており、生体肝移植のプログラムを立ち上げるためにアジアから多くの医師が訪れており、有用な人材として求められています。
現在、アメリカではクリーブランドクリニックの橋元先輩、マウントサイナイの別城先輩が移植外科医として活躍されており、その他にも多くの日本人の先生がアメリカで移植外科医として活躍されています。消化器・総合外科での手術技術や術後管理の経験を基礎として、さらに自分の力を伸ばす大きなチャンスであり、また、その技術を世界に伝えることができたら素晴らしいと思います。是非一緒に頑張りましょう。

REPORT 04

(入局年/平成7年)

アメリカ合衆国
クリーブランドクリニック

私はアメリカのオハイオ州にあるクリーブランドクリニックで、腹部多臓器移植のクリニカルフェローとして勤務しています。こちらではドナーやレシピエントの手術に加え、移植の適応評価、ICUを含めた患者管理などのトレーニング中です。アメリカの臨床プログラムに参加する利点は、短期間に圧倒的な症例数を経験出来ること、世界中から集まってくる仲間と競い合えることだと思います。
クリニカルフェローシップは、レジデントを終えた医師が自分の専門分野をより深く掘り下げて行くためのトレーニングプログラムです。移植外科では昼夜を問わず手術があるため時間に追われる毎日です。肉体的精神的にタフであることが要求されますが、とてもやりがいがあります。医学部の学生の方、また卒後間もない方の中にはアメリカの医師免許取得を目指して頑張っている方が多くいると思います。決して平坦な道ではありませんが、努力する価値は十分あります。日本での経験を基礎に、自分の力を伸ばす大きなチャンスにめぐりあうことが出来ると思います。

REPORT 05

(入局年/平成4年)

スーダン
NPO ROCINANTES

今の時代は恐ろしいくらいの速さで展開していっています。この変わりゆく時代の中で、不変のものが根底にあるこの教室こそ、次世代に誇れるものにならなければと思います。
私は、平成4年に当教室に入局し、大学院を経て外務省に入省しました。海外に身を置いて10年以上経ちました。
今はアフリカ・スーダンでNPOを設立し医療活動を行っています。スーダンは内戦が続き、現在でも紛争のある国です。日本とは全く異なる環境下にあって、医療のみの活動に留まりません。水・衛生問題、保健教育、学校教育、産業育成など多岐に構想は広がります。また、九州大学とスーダンの研究所との学術協定も締結されました。政治的、宗教的なものを乗り越えて、学術交流が成功することに尽力しています。
私は年に2回ほど帰国し、教室に顔を出します。私の身分は留学生となっており、赤で表示されています。そして、在籍を示す白に反転させます。年に2度の反転です。これが私の身の拠り所であり、教室員が頑張っていることが、海外での私の励みにもなります。これが、教室の本当の良き伝統になっているのでしょう。
この伝統を守り、そして新しきものへと発展させていく気概も持って、将来を見つめてください。

国内留学

REPORT 06

(入局年/平成23年)

がん研究会有明病院
大腸外科

2023年4月より東京のがん研究会有明病院で医員として勤務させていただいております南原翔といいます。現在、大腸外科のレジデントとして日々精進しています。医局の先輩が以前こちらで研修されており、その先輩の手術に対する姿勢や技術に感銘を受け、同じ環境に飛び込みたいと研修を希望したところ機会をいただくことができました。
がん研の大腸外科は年間700例以上の大腸癌手術を行っているハイボリュームセンターで、現在スタッフ7名、レジデント12名の大所帯で日々の診療を行っています。我々レジデントの業務は病棟管理、手術が中心で、時には執刀のチャンスもあります。また、直腸癌を中心にロボット手術を積極的に行っており、今年3月に術者認定を取得した私もスタッフのご指導の下、少しずつ経験を積ませてもらっています。さらに、以前より直腸癌に対して放射線治療を加えた集学的治療を行っており、「Watch and Wait」といった究極の肛門温存治療などの最先端の治療も勉強しています。これまで蓄積された臨床データも豊富で、アイディアがあれば臨床研究も行うことができます。
一方で週末はしっかり休みもあり、妻も子供もこちらでの生活を満喫しており、家族でゆっくりした時間を過ごすこともできます。志が高い同期にも恵まれ、毎日刺激をもらいながら過ごしています。国内留学という貴重な経験を与えていただき本当に感謝しています。このような機会を与えてくれる当科でぜひ一緒に頑張りましょう。

REPORT 07

(入局年/平成25年)

がん研究会有明病院
胃外科

私は2023年4月1日よりがん研有明病院胃外科医員として勤務しています。主に胃癌の手術、病棟管理業務を行なっています。
がん研有明病院の胃癌症例数は日本一であり、ハイボリュームセンターで勤務できることは貴重なキャリア経験です。国内名門教室から集まってくるエリート外科医たちと切磋琢磨して日々手術の適応・手技の勉強をしています。外科医が手術に専念できるように病院全体がサポートしています。また、がん研有明病院は胃癌データベースを日頃の診療から整備しています。カルテ入力を簡潔にし、テンプレートを多用しています。そのテンプレートから直接胃癌データベースに情報が集まるようにシステムが作成されています。後日データ集めに費やす時間の節約ができるだけではなく、データの信憑性も高い。現在、胃癌データベースを用いて、多数のエビデンスを発信しています。
国際胃癌学会事務局のあるがん研有明病院では全世界から外科医が見学・研修に来ています。海外で手術する臨床交流プログラムもあり、各国の外科医と交流することで、日本の外科医の長所短所をより理解でき、自分のモチベーションを上げることができます。海外留学は魅力的ですが、日本にいながら、高いレベルの手術手技が勉強でき、国際的な視野も養えるがん研有明病院は貴重な国内留学先だと思います。ぜひ一緒に勉強して世界一流の外科医を目指しましょう。

REPORT 08

(入局年/平成29年)

国立研究開発法人
医薬基盤・健康・栄養研究所
プレシジョン免疫プロジェクト

2022年5月より大阪茨木市にある国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 プレシジョン免疫プロジェクトで、プロジェクト研究員として勤務しています。現在、膵癌の免疫機構について研究を進めています。
私は大学院の頃から生体肝移植ドナーのグラフト(提供肝)の機能・質に関わる研究を行っており、ドナーの肝臓と免疫細胞との関係性を研究していました。研究を続けていくうちにまた、臨床でがん患者の診療を行ううちにもっと免疫について自身で深く学び、新しいことを発見したいという思いが強くなり、本研究室で学ばせていただく事となりました。
本研究室ではマルチパラメーターフローサイトメトリー等を用いた免疫細胞の研究を行っており、新しい発見や学びに日々心を踊らせながら学ぶことが出来ています。今後は免疫に関して学ばせていただいたことを肝移植分野にぜひ反映したいと考えています。基礎研究は医学だけではなく様々な分野から集まってきており、自分の知識の幅を広げることができるいいきっかけになると思います。興味のある方はぜひ一緒に頑張りましょう!

REPORT 09

(入局年/令和2年)

北海道大学大学院医学研究院
病理学講座統合病理学教室

私は2023年6月より特別研究学生として北海道大学大学院統合病理学教室に国内留学しています。現在、がん進展における炎症調節因子の役割の研究を行っています。
大学院への進学にあたり基礎研究への興味があったことから、病理学教室への国内留学の提案を受けました。北海道大学大学院統合病理学教室の谷口浩二教授は元々、九州大学大学院第二外科出身であり、私の研究指導を快諾していただきました。第二外科出身の教授は全国様々な大学に多数おられ、それぞれ多様な研究テーマをお持ちです。大学院生の興味・ニーズに合わせた国内留学先の提案ができるのは、幅広い人脈を持つ第二外科ならではの強みだと思います。
研究は上手くいかないことも多いですが、実験を重ね、少しずつデータを積み上げ、カンファレンスで教授や他の大学院生との議論を繰り返す中で考察を深める毎日を過ごしています。また、北海道の冬は想像以上に寒く、冬の間は道路が常に厚い氷で覆われているのは驚きました。気候だけでなく食事や文化の違いもあり、国内留学していなければ経験できなかったであろうことが沢山あります。 国内留学は、新たなステップを踏むための貴重な機会です。自然環境や文化が異なる留学先での経験は、きっとあなたの視野を広げ、人生に新たな視点をもたらすことになるでしょう。国内留学を検討している皆さんには、是非その魅力を感じていただき、自らの成長と未来のために活かしていただきたいと思います。

REPORT 10

(入局年/令和2年)

山口大学 免疫学教室

今、がん治療は転換期を迎えており、外科治療、化学療法、放射線療法に加えて免疫療法が治療の大きな選択肢となっています。そして昨今開発が進んでいる免疫細胞療法として“CAR-T細胞療法”があります。CAR-T細胞療法は、CAR(Chimeric antigen receptor)というがん抗原を認識できる受容体を持ったT細胞を作製し患者さんに注射することで、がんを攻撃してくれる新しい治療法であり、血液腫瘍をはじめとして抗腫瘍効果が得られています。一方で固形腫瘍に対しては効果が小さいことが知られています。
私は、固形腫瘍に効果を示すCAR-T細胞療法の開発について全国でもトップレベルの研究を行っている山口大学大学院医学系研究科 免疫学講座に特別研究留学生として2023年4月より学んでいます。大学3年生以来10年ぶりにピペットを握るため、最初は実験の基礎から叩き込む毎日ですが、研究室の先生方や大学院生の先輩からたくさんご指導いただき、また他大学や企業との共同研究にも数多く携わることができ、充実した生活を送っています。ミーティングや勉強会では世界や日本の最先端のがん研究を学び、それが臨床にどう役立つか、自分たちの研究にどう生かせるかハイレベルなdiscussionに日々身を置き、とても刺激を受けています。また、研究に没頭できる環境ももちろん良いですし、休みの日には家族と過ごしたり旅行にいったりもできます(大学の近くに空港があるので東京まですぐです)。
基礎研究を通して臨床とは違ったがん治療の基礎そして最先端の知識を身につけることができ、外科医として、手術+αでパワーアップできていると実感しています。皆さんも医師人生の中で一度は基礎研究に浸かるのも良いのではないでしょうか。

REPORT 11

(入局年/令和3年)

公益社団法人 日本臓器移植ネットワーク(JOT)

2024年4月より東京都 港区にある公益社団法人 日本臓器移植ネットワーク(JOT)の調査・研究部で勤務しています。JOTは国内唯一の臓器斡旋機関です。調査・研究部は今年度新たに発足した部署であり、調査、研究、公表の3本柱を掲げ日常業務を行なっております。移植斡旋に直接関わることはあまりありませんが、医師の立場から医療情報の集計・分析・公表、統計データの提供など幅広く業務を行なっております。
私は卒後5年間の病院勤務後の勤務となりましたが、これまでとは全く違う視点で、行政、提供・移植側施設、都道府県コーディネーター、検査施設や各学会の方々とお話しする機会が多く、日々視野の広がりを実感しています。臓器移植法が施行され今年で27年となりますが、多くの待機中患者が待機中に亡くなってしまっているのが現状です。そういった現状を改善すべく社団内部のデータベースをもとにした研究にも力を入れて行きます。長い医師人生、寄り道をしないと知ることができない世界もあるかも知れません。当科入局を考えている方々は、ぜひ一緒に頑張りましょう!