留学レポート
海外留学
REPORT 01
別城 悠樹Yuki Bekki
(入局年/平成24年入局)
ニューヨーク州
私は2024年より、アメリカ・ニューヨーク州のロチェスター大学で腹部移植外科医として勤務しています。肝臓・腎臓・膵臓移植に加え、生体・脳死・心停止ドナー手術、肝胆外科手術、周術期管理を担っています。
移植医療では多職種連携が不可欠であり、内科系診療科やICU、薬剤部、栄養管理部と協働しながら診療を行っています。外科に専念できる環境である一方、これまで消化器・総合外科で培った集学的管理の経験が、診療科間の橋渡しとして役立っていると感じています。
心停止ドナー移植や機械灌流といった分野では、米国の迅速な導入と発展のスピードに日々刺激を受けています。また、大腸癌肝転移に対する肝移植も当院のDr. Hernandezを中心に導入が進んでおり、今後の発展が期待される分野です。さらに、transplant immunologyのsurgeon-scientistのDr. Emamaulleeが今年からチームに加わり、臨床・基礎の両面から新たな発信ができる環境に大きな期待を感じています。
一方で、これまでの消化器・総合外科での修練で培った「各症例ごとに改善を重ねる姿勢」は、ロチェスターの臨床にも大きく活かされています。
海外での経験は非常に刺激的で、外科医としての経験・視野を広げてくれると感じています。興味のある方は、ぜひ留学も選択肢の一つとして考えてみてください。ロチェスターに関心があれば、いつでもご連絡ください。
REPORT 02
中山 湧貴Yuki Nakayama
(入局年/平成31年入局)
ペンシルベニア州
外科学と聞いてどのようなイメージを持ちますか?実は皆さんの想像する「手術をする科」というのは一面に過ぎないのです。我々は患者さんの病変に直接アクセスできるという大きな特性を持っています。そのため、病変を取り出して観察することや、そこから細胞を遊離して培養して実験を行うことで実際の生体内により近い検討ができます。外科学こそ基礎研究とは切り離せない分野なのです。
留学の意義は、これまでになかった技術・知識の獲得すること、新しい切り口の問題解決方法を学ぶことです。こちらのラボで取り組んでいるのは、肝硬変で機能を失った肝細胞に特定の遺伝子を組み込むことで再度そのはたらきを取り戻せるのではないかという課題です。現時点で、機能を失った肝臓を再生させる手立てはなく、肝移植が唯一の治療となります。しかし、ドナーの不足などの問題があります。もしも、生体内の細胞機能を再生できるとしたら、これはもう一つの治療選択肢となりうる、実に画期的な研究なのです。これを可能にするにあたっては、生理的な遺伝子導入方法が必須です。シャーレの上では多少細胞に乱暴なことをしても大丈夫です。しかし、生体内ではそれはできません。当ラボでは、これを実現するためにより生理的な遺伝子導入技術を用います。このような明快かつ大胆な発想や、それを可能とする遺伝子導入技術は、日本で外科医をしているだけでは手に入らなかったものです。
私の留学しているペンシルベニア州のUniversity of Pittsburgh, Department of Pathologyでは上記のような課題に対して国籍や人種の垣根を超えて活発に議論がなされています。ラボのBossも研究員の部屋にきて積極的に意見交換をし、実験結果が得られたらすぐに次の作戦を練るという非常にスピード感のある研究室です。
自分は外科医もしくは外科医志望だから研究は別世界の話、と思っているならばそれは大きな間違いです。外科医こそ、外科医の視点でしかできない研究があります。当教室では、そのための扉は大きく開かれています。「手術も研究も!」と、やる気に溢れた皆さんとともに、医療の課題を解決する日が来るのを心待ちにしています。
REPORT 03
橋元 宏治Koji Hashimoto
(入局年/平成7年)
クリーブランドクリニック
私はアメリカのオハイオ州にあるクリーブランドクリニックで、腹部多臓器移植のクリニカルフェローとして勤務しています。こちらではドナーやレシピエントの手術に加え、移植の適応評価、ICUを含めた患者管理などのトレーニング中です。アメリカの臨床プログラムに参加する利点は、短期間に圧倒的な症例数を経験出来ること、世界中から集まってくる仲間と競い合えることだと思います。
クリニカルフェローシップは、レジデントを終えた医師が自分の専門分野をより深く掘り下げて行くためのトレーニングプログラムです。移植外科では昼夜を問わず手術があるため時間に追われる毎日です。肉体的精神的にタフであることが要求されますが、とてもやりがいがあります。医学部の学生の方、また卒後間もない方の中にはアメリカの医師免許取得を目指して頑張っている方が多くいると思います。決して平坦な道ではありませんが、努力する価値は十分あります。日本での経験を基礎に、自分の力を伸ばす大きなチャンスにめぐりあうことが出来ると思います。
REPORT 04
川原 尚行Naoyuki Kawahara
(入局年/平成4年)
NPO ROCINANTES
九州大学医学部第二外科という歴史ある教室の一員として、還暦を迎えた今、このような寄稿の機会をいただきましたことに深く感謝申し上げます。私は21年前、外務省を辞し、現在はスーダンを中心に医療支援活動に従事しております。2023年、スーダンで内戦が勃発した際には、自衛隊機による緊急退避という事態に直面し、多くの方々にご心配をおかけいたしました。幸いにも無事に帰還し、現在は外務省から危険度レベル4が発出されている厳しい状況下ではありますが、同省と密に意見交換を重ねながら、現地での活動を継続しております。
2019年からは活動の場をザンビアにも広げました。比較的安定しているものの地域医療に大きな課題を抱えるこの地で、最先端のデジタル技術の実装に取り組んでいます。AIを搭載したポータブルレントゲン機器による結核診断の迅速化に加え、九州大学医学部MIC(メディカル・インフォメーション・センター)とバングラデシュのグラミンコミュニケーションが共同開発したPHC(ポータブル・ヘルス・クリニック)の導入を進めております。このシステムは、医師の不在地域であっても看護師が簡易医療機器を用いて診療データを取得し、遠隔地の医師へ送信することで的確なトリアージを可能にするものです。さらに母子保健の分野では、AI搭載の超音波診断装置を用い、腹部をスキャンするだけで出産予定日を推定できる技術の導入も進めています。医療資源が圧倒的に不足する地域だからこそ、こうしたAIやデジタル技術を活用した最先端医療の社会実装が、切実に求められています。
現在もスーダンは内戦の最中にあり、医療体制そのものが崩壊の危機に瀕しています。しかし、だからこそ「世界のどこにもできないようなシステム」を一から構築し、導入していけるのではないか。私はそれを、暗黒の只中にある希望として信じています。六十歳という節目を迎え、第二外科という温かいアカデミアの知見に支えられながら、この挑戦を続けていけることに幸せを感じております。今後とも、同門の先生方の末永いご指導ご鞭撻を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
国内留学
REPORT 05
工藤 健介Kensuke Kudo
(入局年/平成23年)
私は2025年4月より、東京のがん研究会有明病院への国内留学の機会を頂き、胃外科レジデントとして勤務しています。がん研究会有明病院の胃外科は、国内トップの胃癌手術件数を誇り、専門性の高い最先端の手術及び診療が日々行われています。赴任してまだ1年ではありますが、日々自分の未熟さと向き合いながら、多くの学びを得られていると実感しています。
がん研究会有明病院の国内留学を通じて得られるものは大きく3つあると感じております。
まず1つ目は、胃癌手術に関する学びです。がん研の胃外科の先生方の手術には、技術の高さはもちろん、明確なコンセプト、細部への徹底したこだわり、術後合併症を防ぐための工夫など、非常に多くのノウハウが詰まっており、自分自身の未熟さを痛感し改める良い機会となっています。また、レジデント間でのビデオカンファレンスを通じても手術の反省やコンセプトの整理が出来ています。
2つ目は、豊富な症例データを活用した臨床研究の機会です。がん研の胃外科には圧倒的な数の手術症例が集積されており、データの収集、解析を行い、論文として発信する事ができます。指導医の先生方からの的確なご指導のもと、非常に質の高い論文を多く執筆できる環境にあります。論文にまとめる事で、自身や科としての業績のみならず、日々の診療やカンファレンスにおいても活かす事ができ、内容によっては胃癌治療ガイドラインに引用され得るエビデンスが発信できる可能性がある点も、大きな魅力の一つです。
3つ目は、医局の垣根を越えた先輩、同僚の方々との交流です。がん研には全国各地から様々なバックグラウンドを持つ医師が集まっており、日々多くの刺激を受けています。国内留学をしなければ出会えなかったであろう方々とのつながりは、今後の外科医人生においても大きな財産になると感じています。
がん研に限らず、国内留学は年代に関わらず多くの学びを得られる貴重な経験です。本経験が、国内留学を検討されている先生方にとって一つの参考となれば幸いです。









